獣医師の衛生コラム

衛生コラム① 狂犬病予防注射を受けさせましょう

狂犬病とは人、犬、キツネ、産業家畜動物、コウモリや鳥類など全ての温血動物の狂犬病ウイルス感染症です。感染した動物は長い潜伏期間の後に発症し、発症した場合ほぼ全例が死亡する、非常に致死率の高い感染症です。
それではこの恐ろしい「狂犬病」の蔓延を防ぐ予防接種について、おさらいをしながら考えていきましょう。

日本では1956年の発生を最後に狂犬病清浄国の状態を維持できていますが、これは1950年に制定された狂犬病予防法のもとに、予防接種、検疫、野犬の捕獲(現在この地域で見かけることはありませんが)と飼い主の登録の3つを徹底した防疫対策の実施が功を奏していることに他なりません。この中の予防接種については、狂犬病予防法の第一章第四条に「犬の所有者は、犬を取得した日(生後九十日以内の犬を取得した場合にあっては、生後九十日を経過した日)から三十日以内に、厚生労働省令の定めるところにより、その犬の所在地を管轄する市町村長に犬の登録を申請しなければならない。」と明記されております。また同章第五条には「犬の所有者はその犬について、厚生労働省令の定めるところにより、狂犬病の予防注射を毎年一回受けさせなければならない。」とあります。

このため犬の飼い主が狂犬病予防接種を出来るだけ無理なく飼い犬に接種させることができるよう鎌倉市では毎年4月に(公社)神奈川県獣医師会主管の「狂犬病定期集合注射」を各地域の公園や駐車場をお借りして実施し、その場で登録を済ませられるようにしております。それに平行して湘南獣医師会会員病院(衛生時報広告欄参照)では即日鑑札及び注射済票の発行、登録手続きの代行が通年可能な体制を整えておりますので集合注射の日程に都合が合わない場合でも未接種、未登録のままにしないようにしましょう。

現代は著しい交通網の発達によって物資輸送及び人的交流が国際化しているため、かつて日本国内で狂犬病が大流行した50~60年前とは比べ物にならない位、感染症もまた短期間に世界中を駆け巡る時代に変化しています。例えば92年ぶりの口蹄疫の発生(2000年3月)や79年ぶりの高病原性鳥インフルエンザの発生(2004年1月~)などのように、清浄化されていた感染症が再発生しております。今一度、社会の状況と地球環境が変化していることを再認識し、狂犬病清浄国維持のために犬を飼育するすべての人が狂犬病侵入阻止、大流行防止のためにすべきことを再確認する事が大切です。